あなたがもし歯医者さんだったら、細菌やウイルスに感染している可能性がある器具で、大切な家族の歯を治療できますか?
当院は、来院していただくみなさんを「大切な家族」だと思い、安心・安全な治療を受けていただきたいという思いから、消毒・滅菌をはじめとする院内感染予防に力を入れています。
患者さんのお口に一度入った器具は、院内感染の経路を断つために、患者さんごとに消毒・滅菌、または可能な限りのディスポーザブル(使い捨て)製品を利用しています。
【オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)】 常にフル稼働でがんばってくれています。 |
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【BK水(除菌水)】 手洗いは基本ですが、細菌・ウィルスも除菌してくれる優れものです。型どりしたものや、みなさんのお口の中に装着する詰め物、かぶせ物、義歯なども除菌してます。 |
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【デンティスター・クアトロケア】 (オイル殺菌器) |
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【タービンやエンジン】 歯を削る時のアレです。外側も内側もオイル殺菌し、さらに滅菌器にかけます。 |
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【電動麻酔器】 限りなく痛みを感じないように、麻酔は、電動制御されたものを使います。でも、残念ながらこういう機械は、滅菌したり、水、薬液で壊れてしまいます。見栄えは悪いですが、感染予防のため、このように使い捨てのビニールでカバーしています。 |
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【根管治療器】 根っこの治療には、正確さが求められます。でも、残念ながらこういう機械は、滅菌したり、水、薬液で壊れてしまいます。見栄えは悪いですが、感染予防のため、このように使い捨てのビニールでカバーしています。 |
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【ダイアグノデント】 むし歯は、診る先生によってC1だったりC2だったり… 小さなむし歯は特に、人の目だけでなく診断器を使用します。 持つところは滅菌できないので、見栄えは悪いですが、感染予防のため、使い捨てのビニールで触れるところをカバーしています。 |
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【ダイアグノデントペン】 ダイアグノデントペンは、「隣接面(歯と歯の間の接触部)むし歯」を調べるのに眼も器具も届かない、レントゲンでもよく見えないところをレーザー光で調べてくれます。 |
血液によって感染する主なウイルスは以下の3つがあります。歯科治療におけるウイルスの感染経路は使用器具からの感染、針刺し事故(医療従事者の感染)が考えられます。
B型肝炎ウイルス(HBV)
B型肝炎ウイルスは、血液や体液を介して感染します。B型急性肝炎は、性行為、医療従事者の針刺し事故、注射針の使い回し、入れ墨などが主な感染経路となり、B型慢性肝炎の大半は、母子感染が原因です。B型急性肝炎は、感染しても肝炎とわかるような症状があまりみられず60~70%の人は治癒します。しかし残りの30~40%の人では典型的な急性肝炎の症状がみられます。主な症状は、関節痛、食欲不振、吐き気、全身の倦怠感、肝臓病特有の黒褐色尿や黄疸(おうだん)などです。
C型肝炎ウイルス(HCV)
C型肝炎ウイルスは、血液を介して感染します。まず急性肝炎を発症し、そのうち7割が慢性肝炎に進行します。放っておくとさらに進行して肝硬変を経て肝臓ガンへ進行する恐れがあります。
慢性肝炎の状態では生命に危険がおきることはなく、継続的な治療に時間をとられることを除けば健康人と同じ生活が出来ますが、肝臓ガンが発生したり、肝硬変が進行して肝不全を引き起こしたりすると、生命の危険がせまってきます。
エイズウイルス(HIV)
エイズの原因となるウイルスであるHIVは、ヒトの体の中に侵入すると、免疫機能の中心的な役割を担っているリンパ球(白血球の一種)を次々に破壊します。その結果、徐々に免疫力が下がっていき、免疫不全状態に陥り、健康な時にはかからないような重い感染症や悪性腫瘍、あるいは痴呆や運動障害等の神経症状をきたします。
私が滅菌の大切さを感じたのは、平成13年ごろ、まだ青山デンタルクリニックを開業する前でした。ちょうど、「もっと理にかなった方法で歯周病治療をしたい」と、「歯周内科療法」を始めた時でした。
歯周病をはじめ、多くの歯の疾患は、「感染症」です。 感染症というのは、「細菌(病的な微生物)」、「ウィルス」、「芽胞(カビ)」により、体の抵抗力がそれらを防御、排除しきれず、なんらかの症状が現れて、「正常」でない状況に陥ることです。
歯周内科療法は、熊本県天草市で歯科医院をされている生田図南先生が提唱されて、「薬で歯周病を治す」ことを目指して研究が進められました。歯周病は、『トレポネーマ・デンティコーラ』という細菌と『カンジダ菌』というカビが関与している事が分かり、それらに効果がある抗生剤と抗真菌薬(抗カビ剤)を使用する、「非外科的な治療」が確立されました。その治療を行う、「国際歯周内科学研究会」に加わり、私にとっては様々なパラダイムシフトが起こりました。
歯周ポケット内には、細菌やカビ、時には原虫(アメーバやトリコモナス)が生息しています。 「位相差顕微鏡」という特殊な顕微鏡を使って、撃退すべき細菌(バイ菌)をその場で確認・特定して、そのターゲットに向けて薬を無駄なく使用します。その結果、歯周病の進行を食い止め、改善していく事例・症例を、臨床医として数多く経験してきました。
歯周病(歯周病菌)は、人から人へも移ります。親子間、夫婦間はもちろん、歯科医院の器具からも、歯周病菌が感染する可能性があります。そのため、当研究会では、徹底した院内の滅菌と感染予防システムを提唱し、そのシステムを少しづつでもこの業界で広めることを目指してきました。
例えば、歯科治療で必ず使われる『タービン』という器具は、ある地域の歯科医院へのアンケートで、毎回滅菌して使用すると答えた医院は、たったの「3%」だったのです!
「滅菌は愛だ!」という言葉を聞いたのは、私の尊敬する新潟県十日町市で歯科医院をされている阿部昌義先生からですが、阿部先生の医院にお邪魔した際に、あらゆる物を感染から守るために、滅菌と感染予防を行なっていました。
タービンを滅菌するのは当たり前のことですが、阿部先生は、ユニットの人が触れる部分は全てに使い捨てのビニールカバーをし、治療中に触る鉛筆まで滅菌していたので、当時の私は大変驚きました。そして、「うちの医院でも、ここまでやらないと」と感じ、開業する際には可能な限りの『院内感染予防』と『滅菌』の取り組みを、常に自院でできうるマックスの状態でいたいと考えてきました。「今日が昨日よりも1%でも清潔度が上がっている」ことを目指して、今も取り組みを続けています。
今では、「エコシステム」という院内循環の除菌水システムを配管とともに実施し、お口をゆすぐお水も治療器具から出るお水も、細菌等で汚染される水道水ではなく、濃度コントロールされた除菌水を利用しています。
そして当院で治療を受けられている皆さんにはお馴染みですが、「POICウォーター」という除菌水で治療前にうがいしていただき、お口の中を除菌してから治療を行なっています。
院内感染予防、滅菌の世界も、日々進化しています。もしかしたら、次に当院に訪れた時には、更に感染予防が進んでいるかもしれませんよ。